コラム
皆様に信頼される後見人を目指して
私たち専門職成年後見人は、仕事としてご本人の財産をお預かりして適正に管理するお手伝いをしています。でも、預ける側からすれば、見ず知らずの他人に自分の大切な貯金通帳を預けることに抵抗がある……
そんな不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
成年後見人は、毎年報告書を提出して家庭裁判所のチェックを受ける必要があります。
それに加えて私たちリーガルサポート会員は「執務管理規程」という独自のルールにより、半年に一度、財産の管理状況や収支等の報告を行うことが義務付けられています。
報告の期限に遅れると指導監督が行われ、後見人に就任することができなくなったり、場合によってはリーガルサポートから除名されるなど、非常に厳しいルールが設けられています。
また、リーガルサポートでは新規に後見人等名簿への登載(名簿登載が後見人等事案の受託要件です。)を申し込むときや、更新を受けるためには様々な内容の研修を受講する必要があります。
その中には「倫理」についての必須研修があり、専門職後見人としてあるべき行動規範や考え方を深く掘り下げて検討します。
私も何度も受講しましたが、そのたびに専門職後見人の行うべき職務は重責だと感じて、身が引き締まる思いがします。
私たちリーガルサポート会員は上記のような制度を通じて研鑽に励み、皆様に信頼される後見人を目指しています。
ご本人の意向について
日本の風習でもあるお彼岸やお盆などのお墓参り、ご先祖供養のため定期的なお参りを大切にされている方も多いのではないでしょうか。
私たち司法書士が専門職後見人として選任される事案においては、身寄りのない方の後見人に選任されることも少なくありません。
後見人に選任されると、支援者の一人として出来る限りご本人の意向に沿った支援を考えて事務を行いますが、実際のところ、認知症等によりご本人から以前の生活についてお話を聞くことができず、大切なご家族のお墓すらどこにあるのか分からないこともあります。
ご本人にとって大切に思っている人は誰なのか、大切な物はどこにあるのかなどの事柄を、ご本人自身がお元気なうちに、いざという時に備えて情報を整理し、想いを書き留めておくことも大切なことかもしれません。
親族の成年後見人について
親族であっても、成年後見人になるとご自身の財産と本人の財産を明確に分離し、適正に管理しなければなりません。
成年後見人は本人の財産や収支状況を把握し、請求書・領収書の管理、金銭出納帳の作成、医療・福祉サービスの利用手続などの事務を行います。
また、成年後見人は家庭裁判所の管理監督のもと、少なくとも年に1回は本人の財産管理や身上監護の状況をまとめた報告書を家庭裁判所に提出する必要があります。
親族の方が成年後見人になることを検討する場合には、親族の中に責任をもってきっちり財産管理などを行える方がいることが前提になります。
親族がご高齢・遠方の方のみで成年後見人になることが難しい場合や、そもそも財産管理などの事務手続が面倒だと感じられている場合は、一定の費用はかかりますが、司法書士などの専門家に成年後見人就任の依頼を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、成年後見人は最終的には家庭裁判所が判断して選任しますので、「親族間に争いがある」、「申立てに反対する親族がいる」などの場合には、申立書に成年後見人候補者として司法書士や親族を記載したとしても、それらの者以外の専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士等)が成年後見人に選任される場合がありますのでご注意ください。
本人さんの印鑑押印
成年後見人に就任すると、成年後見人は市役所や銀行への届出、施設入所契約、病院入院契約等を行う必要があります。その場合、ご本人である成年被後見人(以降「Aさん」とよびます)にかわってさまざまな書類に署名押印することになります。
各届出先によって求められる記入形式は若干異なりますが、成年後見人である私の名前をBとすると、たいていの場合、「A成年後見人B」と署名し、成年後見人Bのみの印鑑を押印することで処理が完了します。
ところが、相手が不慣れな場合、ご本人Aさんのみの名前を書いてその横にAさんの印鑑を押すように成年後見人に求めてくるところがあります。
そんなときには、常に判断能力を欠く状態にある方の契約書面等への署名押印が法律上無効になる場合や、成年後見人により取り消される可能性のあるものとなることを説明して(そもそも本人Aさんがその場にいて署名押印するわけでもないのですが・・・)、成年後見人Bのみの印鑑押印で処理をしてもらえるよう説得します。しかし、窓口の方も上司の判断を仰がずに独断では受付できないということになり、かなりの時間待たされることがあってとても困ります。
このコラムを通じて、少しでも成年後見制度の理解が深まっていくことを願っています。
後見人の報酬はおいくらですか?
「後見人の報酬はおいくらですか?」「いつお支払いしないといけないのですか?」等々、最近、後見人の報酬について質問を受けることが多くなりました。
「後見人に報酬を支払わないといけないと聞いたが、そんなお金はないし・・・」と心配されるご親族もおられます。
いえいえ、後見人がご親族に対して報酬を請求することはありませんし、ご親族が後見人の報酬を支払う必要もありません。
後見人は、ご本人のために業務を行いますので、ご本人の資産の中から報酬をいただくことになります。なお、資産がない方であっても後見制度を利用することは可能です。
また、報酬額も、後見人が勝手に金額を決めるものではありません。
裁判所に対し、後見人として行った業務を報告して、そのうえで裁判所が適正な報酬額を決定します。
つまり、後見制度とは、判断能力の低下したご本人を保護するための制度ですから、後見人の報酬についても裁判所が関与してご本人の資産を守るのです。
ご本人のために後見制度を利用する必要がある場合には、ぜひ私たちリーガルサポートにご相談ください。
成年後見制度利用のすすめ
「成年被後見人」というと、何もわからない人と思ってらっしゃいませんか。実はそんなことはないのです。
自分の財産を管理することはできないけれど、ヘルパーさん等の手助けを受けながら一人暮らしをしている方は大勢いらっしゃいます。食事の用意をしてもらえば自分で食事をし、誘導してもらえばトイレもできる。着替えも介助があれば自分で行える。
ただ、病気等が原因で、自分でお金の管理や支払ができない。そんなときに成年後見人は、ご本人に代わって契約をしたり支払をしたりして、ご本人の生活を支えます。
役所や金融機関からの書類がわからないから放っているという高齢者のお話を耳にします。たとえば法定後見制度は、後見・保佐・補助とご本人の事情に応じて使えますので、もう少し気軽に成年後見制度の利用を考えていただければと思います。
本人さんの親族からのお願い
様々な事情があって、成年被後見人さんなど(以降、「本人さん」とよびます)の親族が成年後見人に就任することができず、わたしたち司法書士や弁護士、社会福祉士などの第三者が成年後見人に就任するケースがよくあります。
上記のような場合、本人さんと親族の関係は良好な場合(同居して生活している場合など)が多いのですが、成年後見人は親族の方から様々なお願いを受けます・・・
たとえば・・・
本人さんの親戚が亡くなったので、本人さんから香典○○万円を支出してほしい。
本人さんを見舞いにくる親族の外食費を支出してほしい。
本人さんに毛皮のコートを(本人さんの支出により)買いたいのですが・・・
成年後見人は親族からのこのような要望に対して、ひとつひとつ根気よく対応し、場合によっては、裁判所と協議して判断することもあります。
成年後見の仕事は、根気強さと慎重さが求められ、それでいて柔軟に対応する必要もあります。
成年後見人にできること、できないこと
父の認知症の症状が重くなり、一人息子が父の成年後見人になることを検討しています。
成年後見人となった息子は、父を代理してどのようなことができるようになるのでしょうか。
成年後見人は、認知症などで判断能力が低下した本人のために、広い範囲の法定代理権を付与されます。
ただ、その代理権の範囲は本人の財産管理の範囲に限定されます。
具体的には預貯金、年金、不動産、株式等を管理する権限が付与されます。
では、成年後見人が代理することができないことは?
たとえば婚姻、離婚、養子縁組等の本人の身分に関する事は代理することができません。
これらは本人の意思が最も優先されるべきものだからです。
また、本人に代わって遺言書を書くということもできません。
遺言は、法律上、本人にしかできない行為とされているためです。
他にも成年後見人にできること、できないこと様々あります。
これらをよく理解した上で成年後見申立をする必要がありますね。
きっちり理解してから手続きを
成年後見制度は、どのような場合に利用するものでしょうか?
「母が高齢で認知症になっているので、後見人にならないといけなんですよね。」
という質問がよくあります。近年の高齢者社会で、介護保険などの利用と同じようなイメージで後見人をつけないといけない、ということは何となく知っておられるようです。
「後見人の続きは、こうこうで、家庭裁判所へこういう書類を提出して、選任後もこういう報告が必要で、財産管理はこのようにするんですよ」と説明すると、「そんなに大変なんですか」とういう話になって「それじゃ、やめときます」となる場合が結構あります。
後見人をつけないといけないということはがある程度理解されているようですが、本当にどのような場合に後見人を選任するべきかということを、きっちり理解してから手続きをしましょう。
後見人はご本人が死亡するか、判断能力が回復するまで続きます。