今は元気だけど、将来、認知症になってしまったら・・・。
(相談者 本人 70歳)

私は、2年前に妻を亡くし、子供はおりません。65歳で会社を定年退職しましたが、自宅の住宅ローンの支払いも終わり、40年以上会社勤めをしていたので、年金は生活に困らないくらいはもらっています。
ただ、一人になって、この先の生活に不安を感じることが多くなりました。
今は元気に暮らしているけど、この先、認知症になって、自分でお金の管理ができなくなってしまった場合、頼れる親族もいない私は、一体どうなってしまうのだろう?仮に、認知症になった場合には、こんな施設に入所して暮らしたい、という希望はあるけれど、私の希望を叶えてもらうには、誰に頼めばいいのだろう?
色々考えていると、心配になって、夜も眠れなくなってしまいます・・・。
将来、認知症などによって判断能力が低下した場合に備えて、今、私が準備しておくべきことはありますか?
将来、認知症などにより、自分の判断能力が低下した場合における財産管理や、介護に関する契約などを信頼できる人にあらかじめお願いする制度として、任意後見制度というものがあります。
任意後見制度を利用するためには、相談者様と、将来支援をお願いしたい信頼できる人(「任意後見受任者」といいます。)との間で、任意後見契約を締結する必要があります。任意後見契約は、とても重要な契約ですので、任意後見契約書は公正証書で作成しなければなりません。
任意後見契約の効力は、将来、相談者様の判断能力が低下した場合に、法定の申立人が、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てをし、任意後見監督人が選任されることによって発生します。それ以後は任意後見人が任意後見契約に基づいて、相談者様の財産管理等を行います。
判断能力が低下した場合に、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されることによって、任意後見契約の効力が発生するということですが、私は一人暮らしですので、私の判断能力が低下していることを、誰にも気付いてもらえないのではないかと心配です。どうすればよいでしょうか?
任意後見契約と共に、相談者様と任意後見受任者との間で、継続的見守り 契約を締結することが考えられます。 継続的見守り契約は、任意後見契約の効力が発生するまでの間、任意後見受任者が、定期的な連絡や訪問を通じて、相談者様の生活状況や健康状態を把握し、必要な時期に、適切に任意後見監督人の選任申立てができるようにすることを目的として締結する契約です。
任意後見契約は、判断能力が低下しない限り効力が発生しないということですが、判断能力は低下していないものの、体が不自由になり、預貯金の出し入れが自分で出来なくなってしまった場合などに支援を受ける方法はないのでしょうか?
任意後見契約と共に、相談者様が、任意後見受任者との間で任意代理契約を締結することが考えられます。任意代理契約を締結していると、相談者様が、判断能力の低下がないにもかかわらず、ご高齢、ご病気などの理由で、ご自身の財産を管理することが困難な状況となった場合に、任意後見受任者が、必要な範囲で、相談者様の財産を管理してくれるようになります。
任意後見が始まった場合、自分が亡くなった後の葬儀、納骨、身辺整理などを、任意後見人にお願いすることはできますか?
相談者様について、任意後見が開始した場合でも、任意後見契約は、相談者様の死亡により終了しますので、任意後見人は、葬儀など、相談者様が亡くなった後の事務(死後事務)をすることはできません。
相談者様が、ご自身の死後事務を信頼できる人にお願いしたいと考えておられる場合には、任意後見契約と共に、任意後見受任者との間で、死後事務委任契約を締結されるとよいでしょう。
葬儀などの死後事務のことだけではなく、亡くなられた後のご自身の財産の分配についても決めておかれたい場合には、死後事務委任契約の締結の他に、遺言書の作成が必要になります。
遺言と死後事務委任契約を併用することで、亡くなられた後にも、ご自身の意思を実現することが可能になります。